カムチャツカ半島沖 M8.8 地震の観測記録 – 地震計の勝島製作所
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カムチャツカ半島沖 M8.8 地震の観測記録

日本時間 2025年7月30日 8時25分ごろ。カムチャツカ半島沖を震源とするマグニチュード8.8の大地震が発生しました。日本の海岸線にも津波があり、また長く続いた津波警報、津波注意報の影響で一部の交通機関にも乱れが発生しました。

日本にも大きな影響を与えた地震でしたが、以前、ミャンマー大地震の地震波が勝島製作所(東京都葛飾区)の地震計で観測できていた記事をアップしましたが、今回の地震についても勝島製作所(東京都葛飾区)に設置された地震計で観測できていたか確認してみました。

弊社では、自社の地震観測装置を使って、建物や地盤の地震観測を行っています。建物内の5箇所に加速度検出器AccuSEIS203を設置して、収録装置AccuSEIS Centoで観測を行っています。

(社内観測略図)

5台の検出器のうち1階振動台基礎は、建物とは切り離された場所に設置されており、建物の揺れに影響されず地盤の揺れを観測できます。

(1階振動台基礎略図)

(振動台基礎加速度検出器 実物の写真)

USGS(アメリカ地質調査所)のホームページで、地震の発生時刻を確認したところ、日本時間で 2025/07/30 08:24:50 となっていましたので1階振動台基礎の加速度検出器で観測した、その時間を含む40分間の波形記録を確認しました。

収録装置AccuSEIS Centoは、地震を検知しなくても常に加速度検出器で観測した揺れを大容量の内蔵SSDに記録しており、SSDの容量の許す限り、過去に遡って地動の波形を確認することができます。(おおむね1年前まで遡ることができます)

(連続(地動)波形 40分間 (10分間の記録を4枚並べたもの) 画像をクリックすると拡大します)

08:30:00あたり(地震発生5分10秒後)から、それまでとは明らかに違う揺れが観測され始め、08:36:00あたり(地震発生11分10秒後)から、ゆっくりした揺れ成分が見えるようになっていました。このゆっくりした揺れは、このあと10時過ぎまで続きました。

(Google Map にて震央からの距離を確認)約 2460 km

08:30:00の最初の揺れは、震央からの距離で計算すると、秒速7.94km/s
08:36:00の揺れは、震央からの距離で計算すると、秒速3.67km/s
というそれぞれのスピードで勝島製作所まで届いた計算になります。

ただし、08:30あたりは、ちょうど従業員の出勤時間のピークに重なっており、人が動いた振動の影響を考慮しなくてはならない状況でしたので、弊社近傍の地震観測点 防災科学技術研究所 Hi-net(高感度地震観測網)江東地点(標高-2994m、掘削長3030mの地下に設置された速度検出器)の記録を確認してみました。

Hi-netの地震計は深い地点に埋設されていますので、雑振動の影響は限りなく小さいのですが、08:29:47あたりからそれまでと明らかに違う揺れが観測されはじめ、08:36:20あたりからゆっくりした揺れ成分が見えるという、勝島製作所内で観測された記録と同様の傾向が見られました。

勝島製作所内の地震計で記録された波形は、カムチャツカ半島沖で発生した地震波が伝わってきたものと考えて問題ないと思われます。

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